宇宙戦艦ヤマト劇場版

■世界観
非常にヤマト的。基本構造は地球が滅亡の危機に瀕しそれを救うためにヤマトが立ち上がるというお話。ヤマトのシリーズを「やれやれ」とあきれながらも楽しめる人、ヤマトのBGMを聞くとなんかのスイッチが入ってしまう人なら十分劇場に行く価値はあると思う。
■作画
人物:さすがに現在のアニメだけはある。こぎれいにさっぱりまとまっている感じ。逆に劇中に挟まれる前作(アクエリアス編)の絵が浮いてしょうがない。
メカ:ヤマトを始め宇宙船、艦載機はもちろんCG。よって作画、パース面での破綻はなし。コスモパルサー(コスモタイガー後継機)のデザインが予想よりも良かった。
その他:移動ブラックホールもCGなのだが迫力無さすぎ。せめてネクサス(スタトレ映画Generationsに出てくるやつ)位の迫力が欲しい。
■声優
私的には違和感ありませんでした。ダメ絶対音感が妙にいい人モードの子安さんに反応してたけど。
■シナリオ
ヤマトの過去作を知っていれば正直すべて予想される展開内。結末も事前に予想できる。(多分あなたの予想もあたるはず。)お約束*1が好きならにやりとする場面もあるでしょう*2
あまりにも予想通りの展開とご都合主義*3が多いので、私的にはシナリオの練りが足りないのではないかと思う。本来シナリオを8稿くらい練り直すところを3稿くらいのシナリオで通してしまった感じ。とくに真の敵の正体(なにそのプリキュアに出てきそうな悪役)やら移動ブラックホールの正体とか、そして最後の結末やら陳腐すぎていい加減にしろと思う。ここは惑星バルカンを破壊してしまったスタートレックの新映画くらいの思い切りを求めたいところ。続編を作るために制約が多すぎたのか(登場人物を殺せない、ヤマトを破壊できない、地球を壊せないなど)
■EDロール
相変わらず西崎義展の自己主張は健在。というかそのおかげで古き良き悪しきヤマトの範囲を出ていないのだと思う。一番最後にお約束(前掲のコメント*2参照)あり。
■お約束
最初に出てくる旗艦がブルーノアだったり、コスモゼロ(まだ現役なのかよ)が出てきたり。もちろん第三艦橋は…
■出てこないお約束
宇宙空間なのに何故か聞こえる「パリーン」という音。というか(いつものことですが)ヤマト堅過ぎ。
■感想
典型的なヤマトですといいつつも人死にが足りない。よってヤマトにつきまとう悲愴感がない。そこが物足りないか?あと全体的にこじんまりとまとまりすぎてると思う。物語に深みがないというか、軽すぎるというか。一瞬新人同士がいがみ合っても別にそれで話が深くなる訳でもない。星間国家連合内が初っ端は綺麗にまとまってるように見えて、そんなに伏線もなくあっさり崩れてしまうとか。あんな簡単に崩壊するなら、もっと事前に対立があるはず。それでこそエトスの反逆が説得力を持ち、話に効いてくるというのに。またアマールの人たちが「ヤマトとともに戦おう」となるのなんてあまりに民衆が賢すぎるご都合主義。だって現政権が「SUSに資源を提供する代わりに見逃してもらっている」という清濁併せ呑む現実路線の政策の上に成立しているのだから、世論もその「偽りの平和」を支持してるはず。よって普通は「厄介者のヤマトと地球人は出て行け」になるとおもう。というか大衆(愚民)なんてそんなもんだろ。あ、もしかして政権交代の素地ができてたのかな?どこぞの国みたいにw 最初は地球=厄介者=北朝鮮 VS 星間国家連合=世界を(悪い意味でなく)支配している正義、調和=国連(まあ国連もまとまっちゃいないし、国家間の対立と争いの縮図だけど、理想論的国連という意味で)みたいな図式で虐げられし人々が努力で体制を打ち破るみたいな壮大な物語を描いてていくのかと期待しちゃったよw 結局そんな技量はなかったけどね。

■結論
ヤマトファンならまあいって損はしないと思います。仮に損したと思っても、それを含めた味がヤマトじゃないですか(笑

*1:「こんなこともあろうかと」システム

*2:「第一部 完」(これを見た瞬間の周りのため息と言ったらw)(←反転) も含めて。

*3:敵の中に気高き武人がいてヤマトに共感するとことか、アムールの民衆が「ヤマトとともに立ち上がろう」となるところとか。普通「ヤマトは出て行け」になるのが民衆のはず。